プロセスマイニングの導入に先立ち、把握しておきたいのが業務フローの可視化や分析に用いるイベントログの準備方法です。
Celonisのプロセスマイニングでは、業務フロー改革を“トランスフォーメーションサイクル”と捉え推進します。その第一歩は、業務システムに蓄積された膨大なログデータを収集し、分析・解析用のイベントログに変換することから始まります。
その最初のステージがデータの「Collect(収集)」で、業務革新への第一歩です。しかし、そのためには、どのような準備が必要なのでしょうか? また、レガシー化した業務システムからでもデータを収集できるのでしょうか?
今回はこうした疑問に答えるべく、イベントログの準備方法について解説します。 プロセスマイニングの第一歩はイベントログの収集
プロセスマイニングでは、社内の業務システムに蓄積されたログデータをもとに、業務プロセスの全体像を可視化します。これによりボトルネックとなる課題を浮き彫りにし、継続的な改善によって業務の最適化を後押しするソリューションです。
プロセスマイニングのトランスフォーメーションサイクルは、以下の4つのステージに分けられており、繰り返し行うことで継続的な変革を促します。
1.Collect(収集):業務システムからログデータを抽出し、イベントログへ変換 2.Discover(発見):業務プロセスの全体像を可視化して分析し、課題やその原因を把握 3.Enhance(強化):分析結果をもとに、課題の解決策を立案・実行 4.Monitor(監視):設定したKPIをもとに改善成果の進捗を監視・評価
このように、プロセスマイニングに取り組むには、まずは分析対象となるデータを準備しなければなりません。
プロセスマイニングの分析対象となるイベントログとは?
近年のビジネス活動は各種の業務システムによって支えられており、システム内には多様な業務プロセスに関わるログデータ(トランザクションデータ)が蓄積され続けています。これら膨大なデータは、“生のまま”のデータ(ローデータ)では解析できないため、プロセスマイニングに備えて「イベントログ」に変換する必要があります。
収集されたログデータを解析可能なイベントログに変換するためには、以下の3つの要素が必要になります。
・アクティビティ(業務プロセス内で実行された作業内容) ・タイムスタンプ(アクティビティが実行された日時) ・ケースID(1つ1つの業務の流れを表し、アクティビティを紐づける一意のID)
このように、各種の業務システムからログデータを収集し、上記3つの要素を加えて分析可能なイベントログへと変革することが、プロセスマイニングの第一歩となります。
業務システムからイベントログを準備するには
社内の多様な業務システムに蓄積された膨大なログデータを収集し、アクティビティ、タイムスタンプ、ケースIDを備えたイベントログに変換する――こう説明されると、複雑で手間のかかる作業だと受け止められるかもしれませんが、心配はいりません。
Celonisでは、ローデータの収集やイベントログへの変換を支援するコンテンツ群を「Celonis App Store」で用意しています。これを利用することでSAP、Oracle、Microsoft、Salesforceなどの業務パッケージがあれば、容易にイベントログが準備できます。企業が独自にスクラッチ開発したシステムでも対応は可能です。いわゆる「レガシーシステム」と呼ばれる基幹システムであっても導入支援実績はありますので、ご相談いただければと思います。
ここからは、企業のシステム環境ごとに、イベントログの準備方法を具体的に説明していきます。 パッケージソフトからイベントログを準備する方法 業務システムとしてSAP、Oracle、Microsoft、Salesforceなどがグローバルに展開しているメジャーな業務パッケージが運用されているのであれば、Celonis App Storeが提供するテンプレートを活用することで、迅速に容易くイベントログを準備できます。
そのステップは、大きく以下の3つに分けられます。
1.抽出:業務システムからのログデータの抽出 2.変換:抽出したままのローデータからイベントログへの変換 3.取込:変換したイベントログのアップロード
それぞれの手順の進め方を詳しく見ていきましょう。
1.抽出:業務システムからのログデータの抽出 企業内の各種業務システムを、Celonisがクラウドサービスとして提供している「Intelligent Business Cloud(IBC)」と接続し、業務システムに格納しているログデータをIBCのストレージに転送します。業務システムがオンプレミスなのかクラウドかを問わず、分析対象となるログデータをHTTPS経由で転送できます。
2.変換:抽出したままのローデータからイベントログへの変換 IBCのストレージに転送されたのは、まだ加工されていないローデータであり、これをプロセスマイニングの分析対象となるイベントログに変換します。
具体的には、元々の業務システム上で定義された各種テーブルを、プロセスマイニングで一般的に用いられる解析用のアクティビティテーブルやケーステーブルの形に置き換えていきます。
業務システムがパッケージソフトの場合、Celonis App Store内からCelonisが豊富な経験をもとに作成した変換用のコネクタやテンプレートが利用できるため、それらを活用し、スピーディーに変換を行えます。
3.取込:変換したイベントログのアップロード 分析可能な状態に変換されたイベントログを、データストレージからCelonisのプロセスマイニングツールにアップロードします。 これでプロセス解析に取り掛かる準備ができました。
独自開発システムからイベントログを準備する方法
企業が独自にスクラッチ開発した業務システムでも、プロセスマイニング用のイベントログを用意することは可能です。ただし、既存のコネクタやテンプレートを用いることができないため、上記のプロセスのうち「抽出」「変換」は手作業で行う必要があります。
まずは分析対象となる(1)“アクティビティをリストアップ”。(2)それらが実行された際に、システム上でデータがどのように記録されたかをチェック。(3)アクティビティの実行や変更履歴にタイムスタンプが残っているかなど、分析可能なイベントログとなる条件を満たしているかを判断します。
条件に見合っていれば、対象データを抽出してストレージに転送した上で、解析用のアクティビティテーブルやケーステーブルに変換するためのSQLを用意します。
ただし、独自開発のシステムの場合には、タイムスタンプが記録されていないことも多く、業務プロセスの見直しに必要なデータは何なのかといった点の再考が要るでしょう。
レガシーシステムからイベントログを準備する方法
業務システムがレガシー化している場合、タイムスタンプの記録が徹底されていないなど、イベントログとしての条件を満たしていないケースも少なくありません。こうした場合、まずは対象となるデータの記録から始めなければなりません。
その際、データの記録・収集に注力するあまりに、本来の目的を見失うといった事態に陥りかねません。「まずは大枠をとらえる粒度からスモールスタートする」「業務改善にとって意味のあるデータを見定める」などに配慮するとともに、早い段階からCelonisや導入パートナー企業に相談を持ち掛けることをお勧めします。 Celonisはプロセスマイニングによる業務改善を、その第一歩となるデータ準備からきめ細かくサポートします。パッケージか独自開発か、システム環境による労力の違いはあっても、データを抽出・変換する仕組みさえ整備できれば、トランスフォーメーションサイクルを継続的に回し、業務プロセスの解析、改善を続けることで確かな成果を享受できます。
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