2021.7.30
デロイトトーマツではデータドリブンアプローチによりプロセス改革を実施する専門組織Center for Process Bionicsの日本拠点(CPB Japan)の開設をアナウンスしました。これにより、日本でのプロセスマイニングへの取り組みがより一層進むと期待されます。さて、CPBとはどのような組織なのか、CPB Japanを設立した背景やその目指すところは何か、CPB Japanをリードされているデロイト トーマツ グループ パートナーの有川 慶子氏にお話を伺いました。
<CPB設立の背景は>
有川氏:CPBはデロイトグローバルの中でプロセスマイニングを中心とした業務プロセスの改革に資するサービスの開発をしたり、ベンダーのツール群をまとめてグローバルでアライアンスを組んだりするような活動をしている組織であり、6、7年前にドイツで始まり今ではアジアや英国、米国など世界に広がっている。
<「Bionics」という言葉が使われているがその意味するところは>
有川氏:顧客の業務プロセス改革を支援する中で、様々なツールを用いて改革に取り組んで来たが、As-Is調査をしている間にもプロセスは日々変わっていくのを経験してきた。「Bionics」とは生体工学を意味する言葉だが、ビジネスプロセスは生き物の様であり日々変化し、恒常的に変化しないものでは無い。プロセスマイニングを利用すれば、その「生き物の様な変化」を捉えられる、それが強みであるという意味を込めてCenter for Process Bionicsと命名している。
<CPB Japanについて>
有川氏:日本でデロイトがプロセスマイニングのサービスを始めたのは2019年のはじめ頃からで、ドイツのCPBと連携しながら活動してきた。昨年度から国内でもお客様からプロセスマイニングに関する問い合わせ急激に増えてきており、案件そのもの動き出した。そこで、この度CPB Japanを立ち上げ、デロイトの各部署で取り組んでいたプロセスマイニングに関するノウハウをこちらに集約させた。プロセスマイニングはあらゆる業界、業務に適用できるが、サービス提供が始まり間もない日本では、まずはシステム化・デジタル化されたプロセスから取り掛かるのが自然であり、今のところ製造業の事例が多い。
<プロセスマイニングを導入した企業はツールを直ぐに使いこなせているのか>
有川氏:企業としては自社で使いこなしたいと考えている。ツール自体は使いやすいものが多いが初期段階で直ぐにノウハウを吸収するのは大変だと考える。それより難しいのはそれを使って何ができるのか、何をするのかを決めていくことだ。そこはデロイトの様なコンサルティング会社で勘所を掴んでいる人材によるアドバイスが生きるところであると思う。
<欧米企業と比較し日本企業でのプロセスマイニングの普及で苦労している点は>
有川氏:欧米では汎用アプリケーションの利用が進んでいることもあり、業務の標準化の視点では進んでいる。日本企業では職人芸的に業務が進められているところがあり、同様な業務をしているのに部署により複数の別システムを使っていたり、「この業務はこの人に聞かないと分からない」という場面が散見されたりする。よって、プロセスマイニングを単純には適用できない場合がある。現状、欧米での事例ケースの方が多いのであるが、それがそのまま日本のお客さまには当てはまらない状況も多く、そこは工夫している。
<日本企業の強みは>
有川氏:きめ細かに業務プロセスが決められ、それを遂行出来ているのは素晴らしい。ただ、それが個人に依存しており、人材の流動化が進む中で企業としてはその対応に悩んでいる。終身雇用の考えが薄れてきており日本でも業務の標準化の推進は必要である。
<製造業での利用が先行しているとのことだがそれ以外の業種での利用可能性は>
有川氏:もちろんその他の業種においても利用可能である。例えば、金融機関では内部統制やリスク管理などいろいろ活用場面はある。AML(アンチマネーロンダリング)の様に業務をグローバル標準に合わせて行かなくてはいけないものもあり、プロセスマイニング以外の対応も含め業務改革に取り組む領域として挙げられる。
<プロセスマイニングを使い始めた顧客からの「気づきの声」があれば教えてほしい>
有川氏:お客様より「改善策としてRPAを入れてみたが何故か残業時間が減らず、業務全体として改善実感が湧かない」などと言われたときに、まさに役立つのがプロセスマイニングであり、クリティカルパスの発見などに使われている。シミュレーションができるので改善前にその効果を予測でき、「これいいね」とプロセスマイニングの有効性を感じていただいている。
<今後のCPB Japanの活動展開は>
有川氏:お客様からの問い合わせがものすごく増えており、自社で実際にツールを試用した後で「これをどうやって実際に導入していけばいいのか」と相談されたりする。これらの声に応えることのできる資料や活用事例を充実すべく準備を進めている。このコロナ禍の中でDXに取組んでいる企業にとっては、プロセスマイニングはキーワードとして挙げられている。デロイトとしてもプロセスマニング・ツールを活用することで、従来よりも迅速に業務分析結果を出し、お客様と十分な時間をとって協議を重ねることで、より質の高いサービスが提供できるようになると期待している。
Celonisは2019年2月に日本オフィスを開設して、業務を展開しているが、プロセスマイニングに対する企業の皆様の興味の高まりはひしひしと感じており、その感触はデロイトでも同様の思いなのだと心強く感じました。CPB発祥の地、ドイツのデロイトの方には確認できていませんが「Bionics」と言う、この世界では聞き慣れない言葉が加えられている意図として、プロセスマイニングはシステムやデジタルデータだけでなく人間も一緒になってプロセスを作り上げていくものなのだ、という思いが込められているではと、今回のインタビューで感じました。まだまだ、RPAなどと比べると日本での認知度の高くないプロセスマイニング、是非デロイトや他のプロセスマイニングに携わっている皆さんと協力して、日本の普及にCelonisも貢献していきたいと思います。
ご参考リンク
デロイトHP 「Center for Process Bionics Japan (CPB Japan) を開設」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/or/cpb-japan.html