Self Driving Enterprise

自動運転する企業:プロセスにAIを導入するには、まずEMSから始めよう

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Prof. Dr. Wil van der Aalst
Professor for Process and Data Science at RWTH Aachen & Chief Scientific Advisor at Celonis

2021.05.21

AIに関して言えば、その未来は今既に来ているはずでした。テスラ、ゼネラルモーターズ、トヨタ、ホンダなどの企業は、何年も前から、2020年までに自動運転車を作ると約束しました。しかし、すべての企業の約束が失敗に終わりました。SiriやAlexaのようなニューラルネットワークは、私たちの日常生活にAIを注入するはずでしたが、私たちに教えてくれるのは、天気予報や料理のレシピを調べることだけです。

しかし、AIに対する熱狂はまだ衰えていません。すべての大企業、すべての業界がAIに夢中になっているようです。彼らは、組織のデジタルツインを作り、将来のシナリオを予測し、AIの助けを借りてインテリジェントな企業になろうと話しています。それなのに、具体的な成果が出ていないのです。

実際、現在、市場やメディアでAIと称されているもののほとんどは、AIではなく、特定の狭いタスクをこなすようにシステムを学習させる機械学習の幾つかのバージョンに過ぎません。

勘違いしないでください。

AIは、大学やソフトウェア企業が研究開発で努力するに値するものです。しかし、広範な業務プロセスの問題を解決できる人工知能が登場するのは、まだ何年も先のことでしょう。だからこそ、企業には、絵空事ではなく実際に結果を出す技術に、より慎重に投資してほしいと思います。

EMSは、プロセスの洞察から行動へと導く

その技術の一つが、Execution Management System (EMS)です。Celonisは、2020年10月にこの製品を発表しましたが、これによりプロセスの診断をアクションに結びつける次の論理的ステップへと踏み出しました。プロセスマイニング技術を核としながらも、自動化プラットフォームのIntegromat社を買収し、プロセスワークフローの自動化を容易に実現しています。(このシリーズの最初の部分を読む。データインサイトを自動化連携する:プロセスマイニングの次の大きな前進)

簡単に言えば、EMSは、プロセスマイニングでコンプライアンスやパフォーマンスの問題を検出する機能と、それらを解決するための自動アクションの実行とを結合したものです。プロセスモデリングとワークフローの自動化は、どちらも過去にはあまり成功しませんでした。データのないプロセスモデリングは現実を反映していませんでしたし、ワークフローの自動化は壊れたプロセスの合理化も修正もしませんでした。プロセスマイニングは、これらの2つの世界をつなぎ、データに基づいた確かなビジネス上の意思決定を可能にする重要な役割を果たします。

どのような仕組みになっているのでしょうか?

  1. EMSプラットフォームは、トランザクションシステム(ERP、CRM、SCM、HRM/HCMなど)とリアルタイムで接続します。

  2. Execution Instrumentは、プロセスのパフォーマンス(業務実行能力)を継続的に監視・評価し、プロセスやコンプライアンス上の問題(業務実行ギャップ)とその根本原因を特定します。

  3. Execution Applicationは、機械学習を利用して、どのギャップがビジネスに最も大きな影響を与えるか、またそのギャップを解決するためのクラス最高のアプローチは何かを知ることができます。アプリケーションは、複数のシステムにまたがる日常的な意思決定や行動を自動化し、必要に応じて次善の策を提案することで、適切な担当者に行動を起こさせるようにします。機械学習アルゴリズムは、推奨された各アクションの結果から学習し、今後の推奨事項を改善することで、最終的にプロセスのパフォーマンスを長期的に改善します。

  4. Celonis Studio : 新しいCelonis開発スタジオStudioでは、エコシステムのパートナー様やお客様がExecution InstrumentsやExecution Applicationを作成することができます。Celonisには、パートナー様が作成した新規のExecution Applicationがすでに多数あります。

EMSについての私の見解

何度も言いますが、プロセスマイニングは一度きりの取り組みではなく、継続的な活動です。診断に終始していては、投資効果は得られません。洞察力は行動に結びつかなければなりません。EMSによって、Celonisは長い間切り離されていた2つの分野を一つにする方法を見つけました。プロセスマイニングとワークフローの自動化です。

CelonisのEMSは、複数のシステムにまたがる特定のプロセスの幾つかの問題を対象に小規模な自動化ワークフローを実現することで、目に見えないボトルネックとなっていたシステムの複雑性を克服することができます。はっきり言って、SAPやOracleのようなシステムに取って代わるものではありません。しかし、EMSはシステムと人を調和させ、自動的かつ継続的に非効率性に対処することができます。その意味で、EMSはよりスマートな業務実行を実現します。

Celonisが今後取り組まなければならない課題は、EMSをシステムに特化したもの(SAP、Oracleなど)から、真にドメインに特化したもの(買掛金業務、受注管理業務など)に進化させることです。プロセスマイニングのコアと自動化機能は強力なベースとなりますが、EMSを「未知の領域」(CelonisがExecution InstrumentやExecution Applicationをまだ構築していないシステム)に接続した途端、すべてをゼロから作り直す必要があります。Celonisは、データモデルと実際のビジネスロジックの間を翻訳するレイヤーに取り組んでいますが、それには時間がかかるでしょう。

今後、どこに向かっていくのか

Celonisは確かに歴史の中で新たなマイルストーンを達成しましたが、業務実行管理にはまだまだ未開発の可能性領域があります。現在、EMSの自動アクションは、ほとんどが単一のインスタンスと個別のプロセスに基づいています。例えば、「最適なタイミングで請求書を支払うために、支払い条件を更新する」など、1つの視点、1つの部門、1つの結果を選び、特定のプロセス関連のボトルネックを解決するために自動アクションを実行します。

これからの時代は、プロセスをもっと総合的に見ていく必要があります。プロセスは個別に見られがちですが、互いに絡み合っていて、相互に依存しています。あるプロセスのボトルネックは、別のプロセスにその根本原因があるかもしれません。これに企業内のプロセスの数を掛け合わせると、何千もの相互依存性のあるプロセス問題が解決を待っていることになります。

10年後には、プロセスデータが蓄積され、より統語的な機能を持つ複数のプロセスモデルを生成できるような、新しいタイプの中間ストレージ層ができることを期待しています。

その頃には、初の自動運転車が走っているかもしれません。それは誰にもわかりません。

Wil van der Aalst
RWTHアーヘン工科大学およびフラウンホーファー研究機構応用情報技術研究所のフンボルト特別教授

Prof.dr.ir.Wil van der Aalstは、RWTHアーヘン工科大学の正教授で、プロセスデータサイエンス(PADS)グループを率いています。また、フラウンホーファー研究機構応用情報技術研究所FIT(Fraunhofer-Institut für Angewandte Informationstechnik)のプロセスマイニンググループとアイントホーフェン工科大学(TU/e)にも非常勤で所属しています。研究テーマは、プロセスマイニング、ペトリネット、ビジネスプロセスマネジメント、ワークフローマネジメント、プロセスモデリング、プロセス分析など。また、10誌以上の科学雑誌の編集委員を務めるほか、Fluxicon、Celonis、Processgold、Bright Capeなどの企業で顧問を務めています。

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